以前より肌が薄くなったように感じ、小じわが増え、肌のきめが粗くなっても、単なる水分不足だけでは説明できないと感じることがあります。実際、こうした変化を一つの成分だけで説明することは困難です。
加齢に伴い、皮膚ではコラーゲンが減少するだけでなく、エラスチンの構造や、細胞の周囲を支えるさまざまな細胞外マトリックス成分も変化します。肌老化への治療でECM(Extracellular Matrix、細胞外マトリックス)が注目される理由もここにあります。
まず押さえておきたいこと
INEE Clinicで使用するCellREDMとElravie Re2Oは、いずれもECMに着目したhADMを用いた治療 です。コラーゲンの補充だけでなく、肌の細胞を取り巻く環境も考慮します。
両製品は同じ原料カテゴリーに属しますが、同一の製品ではありません。どちらが適しているかは製品名ではなく、現在の肌で何が最も変化しているか によって判断します。
hADMとは何ですか?What is hADM
hADMはhuman Acellular Dermal Matrixの略で、ヒト無細胞真皮マトリックス を意味します。ヒトの真皮から細胞成分を除去し、皮膚を構成していた細胞外マトリックス、すなわちECMの構造を残すように加工した素材です。
肌の細胞が住人なら、ECMはその細胞を取り囲む家のような存在です。皮膚のECMには、主に次のような成分が含まれます。
Collagenコラーゲン 皮膚の構造と強度を支えます。
Elastinエラスチン 皮膚の弾力性と復元力に関わります。
GAGsグリコサミノグリカン 保水とECM環境に関わります。
ADMは単なるコラーゲン補充材ではなく、細胞外マトリックス(ECM)本来の構造的・生物学的特性を維持するように加工された生体材料です。[2 ,3 ]
なぜコラーゲンだけでなくECM全体が重要なのでしょうか?Why the whole matrix matters
皮膚を建物に例えてみましょう。コラーゲンは柱や骨組みに当たります。しかし、柱だけでは良い建物は完成しません。柱の間をつなぐ構造、弾力を担う要素、水分を保持する環境がそろって、安定した組織が成り立ちます。皮膚も同じです。
老化した皮膚では、コラーゲンの減少に加え、弾性線維やECMの構造にも変化が生じます。
01 若い皮膚の真皮
表皮・真皮・皮下組織と、真皮内のECM構成成分 コラーゲン、エラスチン、水分環境がともに皮膚の細胞を支えます。
02 加齢した皮膚の真皮
加齢による皮膚の層とECMの変化を示す概念図 コラーゲンの量や配列、弾性線維、ECM環境がともに変化します。
加齢による変化を簡略化した概念図です。
「コラーゲンが足りない」だけでなく 「皮膚の細胞を取り巻く細胞外マトリックス全体が変化している」
Not “collagen is running low”, but “the whole matrix around the cell is changing.”
近年は、このような視点から肌老化を理解するアプローチが重視されています。[2 ,3 ] hADM治療の興味深い点もここにあります。
hADMでどのような肌の変化が期待できるのでしょうか?What the research has looked at
近年、hADMを注射で皮膚に適用した際にどのような変化が起こるかを評価する研究が発表されています。以下は、2026年に発表された臨床研究で検討された五つの指標です。[1 ]
FIVE RESEARCH ENDPOINTS 肌の構造から表面まで、五つの評価指標
皮膚表面と真皮に関する五つの観察指標 1 2 3 4 5 表皮 真皮・ECM 皮下組織
番号は図と各指標を結び付けるための目印です。 各指標が一つの層だけに関係することを意味しません。
1 皮膚密度 皮膚密度の増加を観察
2 皮膚の弾力 弾力に関する指標の改善を観察
3 小じわ・肌のきめ しわの深さ・表面指標の改善を観察
4 毛穴 毛穴面積の減少を観察
5 水分・バリア機能 水分量の増加・経皮水分蒸散量の減少を観察
研究の比較条件 phADM(Re2O) + HA vs HA単独 [1 ]
ここで示す変化は当該研究で観察された結果であり、両製品の直接比較や、すべての患者さんで同じ効果が得られることを意味しません。
気になる肌の変化を選んでください 下の項目を押すと、詳しい説明と研究内容を確認できます。
01 皮膚密度 真皮の構造と支持力 詳しく見る 閉じる 肌が少し引き締まるような変化 加齢に伴い真皮のコラーゲンの量や配列が変化すると、肌が薄く、ハリが乏しく感じられることがあります。臨床研究では、HAにphADMを併用した側で皮膚密度が増加し、複数の評価時点でHA単独側より大きな改善が確認されました。[1 ]
同じ研究の動物組織実験では、phADMの周囲への線維芽細胞の移動や、新たなコラーゲン形成(neocollagenesis)も観察されました。[1 ] hADMは単に空間を埋める素材ではなく、皮膚内でECMの足場として働き、周囲の組織と相互作用する可能性が研究されています。
Skin density 02 皮膚の弾力 肌が元に戻ろうとする復元力 詳しく見る 閉じる 皮膚の弾力の改善 皮膚の弾力には、コラーゲンだけでなくエラスチンも重要な役割を果たします。コラーゲンが皮膚を支える骨組みだとすれば、エラスチンは動いた皮膚が元の形に戻るのを助ける弾性構造に当たります。
hADMには、製造工程や製品によって、コラーゲンに加えてエラスチンやGAGsなどのECM成分が保持されている場合があります。[2 ,3 ] 臨床試験でも、HAにphADMを併用した側で皮膚の弾力に関する指標の改善が観察されました。[1 ] 単なる乾燥ではなく「肌が薄くなり、ハリがなくなった」と感じる場合は、弾力と真皮の構造を併せて考えるアプローチが必要になることがあります。
Elasticity 03 小じわ・肌のきめ 皮膚表面と真皮の環境 詳しく見る 閉じる 小じわと肌のきめの改善 小じわは、単に皮膚表面にできる線ではありません。光老化や加齢に伴う真皮ECMの変化も関わっています。研究では、HAにphADMを併用した側で、しわの深さや皮膚表面に関する指標の改善が観察されました。[1 ]
hADMは、フィラーのように深いしわを直ちに持ち上げる治療ではありません。肌そのものの質や真皮環境の改善を通して小じわにアプローチする点に違いがあります。
Wrinkle depth 04 毛穴 毛穴周囲の支持構造 詳しく見る 閉じる 毛穴が目立ちにくくなる変化 毛穴が大きく見える原因はさまざまです。皮脂分泌量に加え、加齢によって毛穴周囲を支える皮膚の弾力や真皮構造が弱くなることも影響します。そのため、すべての毛穴を同じ方法で治療できるわけではありません。
臨床試験では、HAにphADMを併用した側で毛穴面積の減少が確認されました。[1 ] 肌の弾力低下とともに毛穴が徐々に目立つようになった方では、こうした観点からhADM治療を検討できます。
Pore area 05 水分・バリア機能 水分を保持する環境 詳しく見る 閉じる 皮膚の水分とバリア環境の改善 肌のうるおいは、皮膚に含まれる水分量だけで決まるわけではありません。水分を保持できる環境と、皮膚のバリア機能も重要です。GAGsは、ECM内で水分と相互作用する代表的な成分です。
臨床試験では、HAにphADMを併用した側で、皮膚水分量の増加とTEWL(経皮水分蒸散量)の減少が観察されました。[1 ] 細胞実験では、角化細胞のヒアルロン酸産生に関わる変化も確認されました。[1 ] hADMは、単に皮膚へ水分を補うだけでなく、皮膚が水分を保持する環境にも着目する治療として意義があります。
Hydration · TEWL
INEE ClinicではCellREDMとRe2Oを使用していますTwo hADM products, not the same
両製品ともヒト真皮由来の無細胞真皮マトリックスを使用しますが、同一の製品ではありません。
CellREDMCellREDM
Human-derived ECM skin booster
HansBiomedのヒト由来ECMスキンブースターです。
公式製品資料では微粒子化した無細胞真皮マトリックスと説明[5 ]
コラーゲン、エラスチン、GAGsを含むと記載[5 ]
皮膚を構成する複数のECM成分を含む点が特徴
単一成分ではなく、細胞外マトリックスの複数の構成要素を含むことから、肌の「環境を整える」というhADMの考え方に沿った製品です。
Re2OElravie Re2O
Particulate hADM
L&C Bioが開発した微粒子状hADM製品です。[4 ]
2026年発表の臨床研究で実際に使用された製品[1 ]
HAとの混合投与側とHA単独側を比較した研究デザイン[1 ]
密度・弾力・しわ・毛穴・水分・バリアの指標で改善を観察[1 ]
本記事で紹介する両製品のうち、注射によるhADMの皮膚への適用について、査読付きの直接的な臨床エビデンスが示されている点が特徴です。
CellREDMとRe2O、どちらが優れていますか?Which one is better
この質問に一つの製品名だけで答えることは困難です。hADMという共通点はありますが、性状や加工特性が異なり、何よりも治療する肌は一人ひとり異なるからです。
目元のように薄い皮膚と、頬のように比較的厚い皮膚を同じ方法で治療することはできません。小じわが主な悩みの方もいれば、毛穴や肌のきめ、皮膚の薄さや弾力低下が気になる方もいます。
INEE Clinicでは、一つの製品をすべての患者さんに同じように使うのではなく、次の点を確認してから適切な製品と治療方法を決定します。
皮膚の厚さ 老化の現れ方 治療部位 肌のきめ 弾力低下の程度 過去の施術歴
hADMはフィラーと同じ治療ですか?Is this just another filler
同じではありません。フィラーが主にボリュームと形 を整えるのに対し、hADMは皮膚そのものの構造と質 に着目します。
フィラーが適している場合
When a filler fits better
一般的なHAフィラーの主な目的の一つは、くぼんだ部分に物理的なボリュームを与え、顔の輪郭を整えることです。
頬のくぼみが大きく、顔のボリュームを十分に回復したい場合
くぼんだ部分に物理的なボリュームを補う必要がある場合
深いしわをすぐに持ち上げたい場合
このような場合には、フィラーや他のボリューム補充治療がより適していることがあります。
hADMを検討できる場合
When hADM is worth considering
hADM治療は、ボリュームよりも皮膚そのものの構造と質に重点を置きます。
「肌が薄くなり、ハリがなくなった」
「小じわと毛穴がどちらも目立つようになった」
「肌のきめが粗くなり、以前より弾力が落ちた」
こうした変化が気になる場合、皮膚治療の選択肢の一つとしてhADMを検討できます。
hADM治療で重要なのは製品名だけではありませんThe product is only the beginning
スキンブースター治療では、どの製品を使ったかだけが話題になりがちです。しかし、実際の治療では次の点も重要です。
どこに、どの深さに、 どれだけ、どの間隔で治療するか
Where, how deep, how much, and how often.
同じ顔でも、目元、頬、口元、首では皮膚の厚さや解剖学的構造が異なります。レーザーやエネルギーデバイス、PN、コラーゲン、HAなどの治療との併用が必要になることもあります。
適切な治療の出発点は、特定の製品を選ぶことではなく、今の肌で何が最も変化しているかを正確に判断することです。
参考文献
Lee YI, Chau NH, Nguyen NH, et al. Injectable Particulated Human Acellular Dermal Matrix Booster for Skin Restoration: An Integrated Randomized, Split-Face, Double-Blinded Clinical Trial and Preclinical Study. Int J Mol Sci. 2026;27(5):2193. doi:10.3390/ijms27052193
Petrie K, Cox CT, Becker BC, MacKay BJ. Clinical applications of acellular dermal matrices: A review. Scars Burn Heal. 2022;8:20595131211038313. doi:10.1177/20595131211038313.
Sydorchuk O, Nguyen AT, Yi KH. Acellular Dermal Matrices in Aesthetic Surgery: Clinical Applications. J Cosmet Dermatol. 2026;25(7):e71043. doi:10.1111/jocd.71043.
L&C Bio. Elravie Re2O official product information. Human acellular dermal matrix-based product information.
HansBiomed Corp. CellREDM™ official product information. Human-derived ECM skin booster composed of acellular dermal matrix containing collagen, elastin and GAGs.
※ 1〜3は学術文献です。4〜5は製品の原料と構成を確認するためのメーカー公式資料であり、学術論文と同等の臨床エビデンスとして引用したものではありません。